遺言執行者に指定されたら?弁護士が解説

遺言執行者に指定されたら?まず考えるべき2つの選択肢

遺言書によって「遺言執行者」に指定された場合、何をすべきか分からなくなってしまうこともあると思います。遺言執行者は、故人の最後の意思を実現するという重要な役割ですが、同時に大きな責任も伴います。相続人との間で板挟みになる可能性や、複雑な手続きに追われることもあります。

遺言執行者に指定された方には、大きく分けて2つの選択肢があります。

  1. 就任を承諾し、遺言執行者としての職務を遂行する
  2. 就任を拒否(辞退)する

どちらを選ぶかは、あなたの自由な意思に委ねられています。就任を承諾すれば、遺言の内容を実現するために法的な権限と義務を負うことになります。一方、拒否することも法的に認められた正当な権利であり、何ら引け目を感じる必要はありません。

この記事では、虎ノ門法律経済事務所柏支店の弁護士が、遺言執行者という立場に置かれた方が適切な判断を下せるよう、それぞれの選択肢について法的な観点から分かりやすく解説します。就任を拒否する場合の手続きから、就任した場合の具体的な職務内容、トラブルを避けるための要点、そして報酬に至るまで、あなたが抱える疑問や不安を解消するための一助となれば幸いです。遺言に関する問題の全体像については、遺言に関する問題で体系的に解説していますので、併せてご参照ください。

遺言執行者の就任は拒否できる?辞退と辞任の違い

「遺言執行者への就任を断ることはできるのだろうか?」これは、多くの方が最初に抱く疑問でしょう。結論から申し上げますと、遺言執行者への就任は、理由を問わず自由に拒否(辞退)できます。

しかし、ここで極めて重要な注意点があります。それは、就任を一度承諾した後に「やはり辞めたい」と考える「辞任」と、就任前に断る「辞退(拒否)」とでは、法的なハードルが全く異なるという点です。この違いを理解しないまま安易に就任を承諾してしまうと、後で取り返しのつかない事態になりかねません。

就任前の「辞退(拒否)」は理由なく自由に行える

遺言で一方的に指定されたとしても、あなたには遺言執行者になることを強制される義務はありません。民法上も、就任を承諾するかどうかは自由とされています。

就任を拒否する際に、相続人に対して法的な「理由」を説明する必要もありません。「仕事が多忙で時間が取れない」「相続に関する知識がなく自信がない」「相続人と良好な関係を築ける自信がない」といった個人的な事情で十分です。

ただし、あなたが就任を拒否する意思を明確に示さないと、相続人たちは手続きを進めることができません。そのため、実務上は、相続人全員に対して「遺言執行者に就任しない」という旨を通知するのが望ましいでしょう。口頭で伝えても構いませんが、後のトラブルを防ぐためには、内容証明郵便などで書面にて通知しておくのが最も確実です。

【通知書の文例】

遺言執行者就任辞退通知書

相続人 各位

私は、故〇〇〇〇様が作成された令和〇年〇月〇日付の遺言書において遺言執行者に指定されましたが、今般、遺言執行者に就任することを拒否(辞退)いたしますので、本書面をもって通知いたします。

令和〇年〇月〇日
(住所)
(氏名) 印

遺言執行者への就任を承諾するか辞退するか、2つの選択肢の前で悩む男性のイラスト

就任後の「辞任」には家庭裁判所の許可が必要

就任前の「辞退」が自由である一方、一度就任を承諾した後に任務を放棄する「辞任」のハードルは格段に上がります。一度遺言執行者の役割とその責任を担うと決めた以上、簡単にその職を投げ出すことは許されません。

遺言執行者を辞任するためには、家庭裁判所に申立てを行い、許可を得る必要があります。そして、その許可を得るためには「正当な事由」(例:重い病気、遠方への転勤など)の存在を裁判所に認めてもらわなければなりません。

【正当な事由の例】

  • 重い病気や怪我で長期の療養が必要になった
  • 遠方への転勤が決まり、職務の遂行が物理的に困難になった
  • 高齢により心身の能力が衰え、複雑な手続きへの対応が難しくなった

単に「相続人との意見が合わず、面倒になった」「思っていたより手続きが複雑だった」といった理由だけでは、正当な事由とは認められない可能性が高いでしょう。

このように、「辞退」と「辞任」は似ているようで全く異なります。最初の意思表示がいかに重要か、お分かりいただけたかと思います。少しでも不安がある場合は、安易に就任を承諾せず、まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

就任した場合の職務と紛争回避のポイント

就任を承諾した場合、あなたは遺言の内容を実現するため、速やかに職務を開始しなければなりません。その職務は多岐にわたり、専門的な知識が要求される場面も少なくありません。ここでは、主な職務内容と、弁護士が最も重視する紛争回避のポイントについて解説します。

遺言執行者は、民法上「善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない」と定められており(善管注意義務)、この義務に違反して相続人に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負う可能性もあります。この遺言執行者の職務と義務を正しく理解することが、トラブルを未然に防ぐ第一歩です。

(参考:法務省「遺言執行者の権限の明確化等」

主な職務内容と一般的な流れ

遺言執行者の職務は、概ね以下の流れで進みます。

  1. 相続人の調査・確定:戸籍謄本等を取り寄せ、相続人が誰であるかを正確に確定させます。
  2. 就任通知と遺言内容の開示:全ての相続人に対し、遺言執行者に就任した旨と遺言書の内容を通知します。
  3. 相続財産の調査と財産目録の作成・交付:預貯金、不動産、有価証券など、故人の財産を全て調査し、財産目録を作成して相続人に交付します。
  4. 遺言内容に沿った各種手続き:預貯金の解約・分配、不動産の相続登記手続き、株式の名義変更など、遺言の内容を実現するための具体的な手続きを行います。
  5. 業務完了報告:全ての職務が完了したら、相続人に対して業務の経過と結果を報告します。
遺言執行者の職務内容を5つのステップで解説するフローチャート形式の図解。相続人調査から業務完了報告までの流れを示している。

相続トラブルを防ぐための3つの鉄則

遺言執行者の職務を遂行する上で、最も避けたいのが相続人間のトラブルです。弁護士として数多くの相続案件に関わってきた経験から、紛争を未然に防ぐために不可欠な「3つの鉄則」をお伝えします。

  1. 徹底した情報開示と透明性の確保
    相続人が不信感を抱く最大の原因は「情報不足」です。「遺言執行者は一体何をしているのか」「財産を隠しているのではないか」といった疑念は、トラブルの火種となります。これを防ぐためには、定期的に進捗状況を報告し、財産目録や手続きに関する書類の写しを共有するなど、徹底して業務の透明性を確保することが重要です。
  2. 全相続人に対する公平・中立な姿勢の維持
    遺言執行者は、特定の相続人の味方ではありません。あくまで故人の意思を実現するための中立的な立場です。一部の相続人から頻繁に連絡があるからといって、その相続人にだけ有利な情報を提供したり、他の相続人からの問い合わせを疎かにしたりしてはいけません。全ての相続人に対して、常に公平かつ誠実な対応を貫く姿勢が、信頼関係の構築に繋がります。
  3. 専門家への早期相談・連携
    手続きで行き詰まった時や、相続人間で意見の対立が生じ始めた時、「自分だけで何とかしよう」と抱え込むのは危険です。法的な判断が難しい問題や、感情的な対立が激化しそうな場合は、迷わず弁護士などの専門家に相談してください。早期に専門家が介入することで、問題が複雑化する前に対処でき、円満な解決に導ける可能性が高まります。

困ったときは弁護士へ相談を

遺言執行者の職務は、想像以上に専門的な知識と精神的な負担を伴うものです。「故人のために」という気持ちだけで安易に引き受けてしまうと、相続人間の対立に巻き込まれたり、慣れない手続きに疲弊してしまったりするケースも少なくありません。

もしあなたが、

  • 遺言執行者に指定されたが、就任すべきか迷っている
  • 相続人同士の関係が良くなく、トラブルが予想される
  • 相続財産の種類が多く、手続きが複雑で手に負えない
  • 就任したものの、相続人から不当な要求をされて困っている

といった状況にあるのなら、一人で抱え込まずに、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士にご依頼いただければ、あなたの代理人として、複雑な財産調査や各種手続きを可能な範囲で代行し、必要に応じて手続きの進め方を整理してサポートすることができます。専門家が介入することで、あなた自身の精神的な負担を大幅に軽減できるというメリットがあります。

虎ノ門法律経済事務所柏支店では、注力分野(相続・不動産・離婚男女問題)について、基本的に初回のご相談は1時間無料としておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。あなたの不安を解消し、最善の道筋を見つけるお手伝いをさせていただきます。

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