遺言内容に納得できないときの対処方法

大切なご家族が遺言を残して亡くなられた際、その遺言の内容に疑問を感じたり、自身が受け取れるはずの財産が少ないと感じたりして、納得できないことがあります。

遺言は故人の大切な意思表示ですが、内容に納得がいかない場合や不公平だと感じるような状況でも、法的に認められた対処方法があります。

この記事では、遺言内容に不満や疑問がある際にできる具体的な対処法を、わかりやすく解説していきます。

遺言内容に納得がいかない場合によくある問題

遺言に納得できない理由としてよく挙げられるのは、以下のようなケースです。

  • 遺言による相続内容が不公平だと感じる
  • 遺言により自分の相続分が全くない、または極端に少ない
  • 一部の相続人だけが特別待遇されているように見える
  • 遺言の内容が曖昧で理解できない
  • 遺言作成時に認知症や判断能力低下の疑いがある
  • 遺言自体の形式や手続きに不備や違法があると考えられる

上記のような状況が発生した場合、遺言に対する対処方法を検討する必要があります。

遺言内容に納得できない際の具体的な対処法

① 遺留分侵害額請求を行う

相続人には法的に最低限保障された相続分である「遺留分」という権利が存在します。

もし遺言によってこの遺留分が侵害されていると感じる場合は、「遺留分侵害額請求」という手続きを行うことが認められています。

対象となる相続人 配偶者・子ども(子の代襲相続人)・直系尊属(被相続人の親や祖父母)(民法1042条1項柱書)
請求可能期間 遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に行使、相続開始から10年以内
請求方法 裁判外で請求(記録を残すために配達証明付き内容証明郵便で送付することが一般的)するほか、話し合いが難しい場合は家庭裁判所に調停を申立て、それでもまとまらなければ民事訴訟において解決します。

遺留分侵害額請求を行うことで、法的に保障された最低限の財産を取り戻すことが可能となります。

② 遺言書の有効性を争う(遺言無効確認訴訟)

遺言書の作成時に判断能力が不十分(認知症など)であったり、第三者による強迫や詐欺などが疑われる場合、遺言自体の有効性を裁判で争うこと(遺言無効確認訴訟)が考えられます。

主に以下のような場合に訴訟を提起することがあります。

  • 遺言作成時、遺言者に判断能力(意思能力)がなかった疑いがある
  • 遺言が誰かに強要されたり、不適切な働きかけ(詐欺・強迫等)で作成された疑いがある
  • 遺言書の形式上の要件を欠いている(例:署名・日付の欠如、署名が著しく異なる場合、押印がない場合など)

ただし、この方法では明らかな立証を求められるため、高度な法的知識や証拠収集が必要です。

③ 遺産分割協議を通じて調整する

遺言に記載された相続人全員の合意が得られれば、遺言とは異なる遺産分割を協議で決めることも可能です。ただし、この場合は遺言によって利益を得る相続人の同意が不可欠となるため、協議において相続人間で丁寧な対話が求められます。

話し合いがスムーズにまとまらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停を利用することも考えましょう。

対処方法の手続き・期間についての目安

遺言内容に納得できない場合には、迅速かつ正しい法的対応が重要です。

それぞれの手続きにかかる期間・期限を以下に示します。

対処法 手続き方法 期限・期間の目安
遺留分侵害額請求 裁判外での通知・交渉裁判所の調停・民事訴訟 認識した日から1年以内相続開始から10年以内
遺言無効確認訴訟 民事訴訟 特に期限はないが、1年以上の期間を要することが多い
遺産分割協議 相続人間での協議または家庭裁判所での調停 期限なし。ただし遺産相続確定まで早期に行うべき

遺言内容に納得できない時の注意点

遺言への対処法を実際に利用する場合には、以下の点に注意してください。

  • 感情的に動かず、冷静に状況把握を行う
  • 対処法の選択は相続の状況により変わるため、熟考して選ぶ
  • 証拠や資料は早めに収集しておく(医療記録、遺言書現物、親族証言など)
  • 法律上の期限を過ぎると権利を喪失するため、対応は迅速に行う

まとめ

遺言内容に納得がいかない場合、ご自身だけで問題を抱え込んでしまうと感情が高ぶり、逆に問題が深刻化することもあります。遺言内容や相続を巡る問題は、できるだけ早い段階で専門家である弁護士にご相談いただくことが賢明です。

当法律事務所では、多数の遺言・相続問題の対応実績があります。遺言に関わるお悩みや問題について、まずはお気軽にご相談ください。依頼者様とご家族が円満かつ納得のいく解決に導けるよう、責任をもってサポートさせていただきます。

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