遺言を巡る家族間トラブルの解決策

大切な家族が残した遺言は、相続において重要な意味を持ちます。しかし、実際には遺言をきっかけに家族や兄弟姉妹の間でトラブルになってしまうケースが多く見られます。

「自分だけ相続分が異常に少ない」「遺言の内容が不公平だ」「遺言は本当に本人の意思だったのか」といった疑問から、親族間での紛争に発展することがあります。

このページでは、遺言を巡る家族間トラブルの典型的なケースと、その解決策について詳しくご説明いたします。

遺言を巡るトラブルが起きやすい具体例

実際の相続問題では、以下のようなケースでトラブルが起きがちです。

  • 遺言の内容(遺産の分配)が特定の家族(相続人)に著しく偏っている
  • 遺言の作成時に認知症や病気の症状があり、意思能力に疑問がある
  • 遺言書が偽造された疑いがある
  • 家族間で意見が異なり、話し合いが進まない
  • 遺言書の形式に不備があり、法的な有効性が疑われる

このような状況はお互いの感情的対立が深まりやすく、放置するとさらに問題が悪化してしまう恐れがあります。

遺言を巡るトラブルに対処するための具体的な解決方法

遺言トラブルに巻き込まれた場合には、冷静に状況を確認し、以下のような具体的な方法で解決を目指しましょう。

① 家族間の冷静な話し合い(任意交渉)

まずは家族・親族同士で冷静な話し合いの場を持つことが望ましいです。相続は法律論だけでなく、人間関係や感情的な問題が複雑に絡む分野であるため、誠実にお互いの立場や感情を理解し、思いやりをもって接することが大切です。

  • 感情的にならず、冷静に話し合いをリードできる第三者(弁護士など)を含めることも有効です。
  • 全員が納得できるまで話し合い、妥協点を見つける努力が必要です。

② 家庭裁判所での調停手続き

任意の話し合いがうまくいかない場合、「家庭裁判所」の調停手続きを利用します。「遺産分割調停」や、「遺言無効確認の調停」などがよく利用されます。

  • 裁判所の調停委員(裁判所が指名した中立的な第三者)が双方の意見を聴き、公正な視点から解決案の提案をします。
  • 法的効力がある調停調書により、今後トラブルが再燃することを防げます。

③ 遺言無効確認訴訟(地方裁判所への訴訟)

遺言の作成過程に疑問があり、「遺言が無効である」と考える場合、地方裁判所へ「遺言無効確認訴訟」を提起することができます。

  • 認知症、精神疾患など遺言作成時の遺言能力(意思能力)に問題がある場合
  • 第三者による強迫・脅迫・詐欺等が存在する場合、偽造の疑いがある場合に有効
  • 証拠収集(医師の診断書、介護記録、関係者証言)が重要となります。

④ 遺留分侵害額請求権の行使

遺言の内容自体が法的に問題ない場合でも、配偶者や一定の範囲の相続人(子ども、直系尊属など)には、法律上最低限保障されている取り分(遺留分)があります。

特定の相続人の取り分が、あまりに少ない場合や全く残されていない場合には、「遺留分侵害額請求」をすることで一定の財産を確保することが可能です。

  • 遺留分の請求期間は、その侵害を知った時から1年以内、または相続開始時(死亡した日)から10年間という期限があります。速やかな対応が必要です。

トラブルを予防するための対策

遺言を巡るトラブルは、将来的にも貴重な家族関係を壊すリスクがあります。このためトラブルが起きる前の対策が非常に重要です。

具体的な予防策には以下があります。

  • 遺言作成時に弁護士や公証人などの第三者専門家を入れて、公正証書遺言の形式で遺言を作成する。
  • 遺言を作成する際は相続人の気持ちを考慮し、平等かつ明確な財産分配を検討する。
  • 事前に家族間で遺言内容や相続方針についてオープンな話し合いを持つ。

各種手続きと期間の目安

以下は遺言トラブル解決に関連する手続きとその期間の目安をまとめたものです。

手続きの種類 申立てする裁判所 期間の目安 特徴・備考
任意の話し合い(交渉) 数週間~数か月 任意交渉であり、自由度が高いが、まとまらない場合もある
遺産分割調停 家庭裁判所 半年~1年以上 裁判所の協力で妥協点を見出す
遺言無効確認訴訟 地方裁判所 半年~1年以上(事案より大幅に長引くことも) 遺言の法的有効性を公的に判断する
遺留分侵害額請求 裁判外、家庭裁判所での調停・訴訟 半年~1年以上 遺留分権利者にとって重要な権利であるため、早急な対応が必要

まとめ

遺言を巡るトラブルは、感情面や法律上の問題が複雑に絡みあいます。そのため、早い段階から法律の専門家である弁護士に相談し、適切かつ冷静な対応を行うことが非常に重要です。

当事務所では豊富な解決実績を活かし、遺言トラブルの早期円満解決を目指しています。まずはお気軽にご相談ください。

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