遺言書の中でも「公正証書遺言」は、公証人という法律の専門家が関与して作成される遺言であり、広く利用されています。
公証人が関与するため方式違背等によって遺言書が無効になるリスクが低く、内容についても相談することができるため、相続手続きもスムーズに進めることができます。
ここでは、公正証書遺言を作成する際の具体的な手順や必要書類、費用などをわかりやすくご紹介いたします。
このページの目次
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言です。公証人という法律の専門家が関与するため、遺言の内容を明確にし、有効性を保障する仕組みとなっています。
また、遺言書原本は公証役場で長期間保管されるため、紛失や改ざんのリスクもありません。
- 法律の専門家が作成を手伝うため、形式不備で無効になるリスクが低い
- 遺言の原本が公証役場に保管され、安全性が高い
- 家庭裁判所による検認手続きが不要で手続きがスムーズ
- 偽造・改ざんの心配がない
公正証書遺言を作成するための具体的手順
① 遺言の内容を整理する
まずは、どのような財産を誰に、どのように相続させたいかを具体的にまとめましょう。
次の点を整理しておくと、公証人とのやり取りがスムーズに進みます。
- 相続財産の内容(例:預貯金の金額、不動産の所在・面積)
- 相続させる相手やその配分割合(誰に何を、具体的に明記)
- 遺言執行者の指定(遺言内容を実行するために必要)

② 公証役場への事前相談・予約
整理した内容を基に公証役場に事前に連絡を取り、相談や予約を行います。特に遺産が複雑で多岐にわたる場合、公証人との事前面談をおすすめします。
公証役場は各地域にあり、最寄りの役場を選びましょう。

③ 必要書類を準備する
遺言作成にあたり用意が必要な書類があります。
主な書類は以下の通りです。
- 遺言者本人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)と実印
- 遺言者本人の本人確認ができる資料(運転免許証、マイナンバーカード)
- 遺言者と相続人との関係が確認できる戸籍謄本(発行後3ヶ月以内)
- 受遺者(遺言で財産を譲る人)が相続人でない場合:住民票(氏名・住所・生年月日がわかるもの)
- 相続財産に関する資料(不動産登記簿謄本・固定資産評価証明書、銀行預金通帳コピー、有価証券の明細書など)
- 証人になる人(後述)の身分証明書コピー(運転免許証等)

④ 証人を2名依頼する
公正証書遺言では証人2名が作成時に立ち会う必要があります。
次の条件を満たした人に依頼しましょう。
- 成人している方(18歳以上)
- 相続人および遺言によって財産を受ける人(受遺者)でないこと
- 利害関係のない公平・公正な立場の第三者が望ましい(公証役場で手配をお願いできる場合有。)

⑤ 公証役場で遺言書作成(公証人の面前で)
予定日に公証役場に本人と証人2名が赴き、公証人の前で遺言内容を口述します。公証人が口述した内容を筆記し、遺言者本人と証人が内容を最終的に確認したうえで署名と押印を行います。これによって、公正証書遺言は完成します。
作成に要する時間の目安は約30分~1時間程度です。

⑥ 公正証書遺言の正本・謄本の受け取り
遺言書の完成後、遺言者は正本または謄本を受け取り、保管します。
原本は公証役場に保管されますので、紛失や改ざんのリスクはありません。
公正証書遺言作成にかかる費用
公正証書遺言の作成には公証役場への手数料が必要です。手数料は、遺産の価額によって異なります。主な目安は以下の通りです(2023年時点)。
遺産の価額 | 手数料(目安) |
100万円以下 | 5,000円 |
1,000万円以下 | 17,000円 |
3,000万円以下 | 23,000円 |
5,000万円以下 | 29,000円 |
1億円以下 | 43,000円 |
この他に別途、戸籍謄本の取得費用や証人に依頼する報酬がかかる場合があります(相場としては1人10,000~20,000円程度)。
状況に応じて弁護士に相談しましょう
公正証書遺言は、法律の専門家が関与して作成される遺言であり、広く利用されている遺言形式です。
しかしながら、財産や相続人が多岐に渡る場合や遺産分割に関する不安がある場合は、一人で対応するのが難しい場合もあります。そのような場合には、相続問題に詳しい弁護士に事前に相談されることをおすすめします。
まとめ
公正証書遺言作成には以下の手順が重要です。
当事務所では、公正証書遺言の作成手続きをサポートしております。ご自身のご希望に沿った遺言作成を実現されたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。