遺産分割の方法にはさまざまな種類がありますが、その中の一つとして最近注目されているのが「代償分割」です。
代償分割とは、ある相続人が特定の財産を相続した上で、その代わりとして、ほかの相続人に金銭などを提供することでバランスを調整する方法を指します。
このページでは、代償分割の特徴や具体例、活用方法、注意点について詳しく解説いたします。
このページの目次
代償分割とは?
被相続人が残した遺産を相続人間で公平に分けようとしても、不動産や事業、株式など簡単に分割できない財産が含まれることはよくあります。
このような場合、継続的かつ円滑な分割を可能にする手法の一つとして代償分割が検討されます。
代償分割では、特定の相続人が分割困難な財産を承継する代わりに、その相続人が他の相続人に対し、現金や預金、代替となる資産を渡すことでバランスを調整します。
代償分割が活用されるケース
具体的に代償分割が選択されやすいケースには、以下のような状況があります。
- 自宅や土地などの不動産を相続人の一人が取得したい場合
- 会社や個人事業を後継者一人が相続し、事業の継続を図る場合
- 農地や森林など、分割が難しい財産を特定の相続人が引き継ぐ場合
- 特定の相続人が被相続人の自宅に居住しており、引き続き居住を希望する場合
代償分割の具体的な計算例
実際の相続での代償分割の活用方法を理解するために、以下の例を挙げてご説明します。
代償分割のシミュレーション例
ある家族のケースを考えてみましょう。
亡くなった方(被相続人)が4,000万円相当の自宅不動産と現金預金1,000万円、合計5,000万円の財産を残し、相続人が長男Aと次男Bの2人いると仮定します。
法定相続分は各相続人が2分の1ずつとなり、各相続人の相続分は2,500万円となります。
財産項目 | 評価額 |
自宅不動産 | 4,000万円 |
現金預金 | 1,000万円 |
合計額 | 5,000万円 |
ここで、長男Aが不動産を取得したいと希望した場合、次男Bとの公平性を保つために代償金を支払う必要があります。
- 長男A:不動産4,000万円を取得。
- 次男B:現金預金1,000万円を取得し、差額の1,500万円を長男Aから代償金として受け取る。
この結果、両者ともに2,500万円ずつの公平な分割になります。
代償分割のメリットと注意点
メリット
- 分割が困難な不動産や事業資産をスムーズに分割できる。
- 相続人同士が納得でき、公平性を維持しやすい。
- 被相続人の財産や事業を安定的に承継できる。
- 遺産分割に伴う短期的なトラブルを回避しやすい。
注意点
- 代償金を支払う側(不動産などを取得した側)に現金負担が生じるので、支払能力の確認が必要。
- 代償金の金額や財産評価に対して、相続人間で合意が必要。
- 遺産額が大きい場合、相続税を考慮した資金調達計画を考える必要がある。
代償金を払うための資金調達が難しい場合、ローンを利用する方法もありますが、一般の住宅ローンは利用できないため、親族間ローンや金融機関が提供する相続専用ローンを利用することになります。
代償分割活用の流れ
代償分割を円滑に進めるためには、以下のような流れを確認しておきましょう。
まとめ
代償分割は、遺産分割時において財産を円満に承継するうえで極めて有効な手法となります。ただし、正確な財産評価や法律的な手続き、税金面の考慮など注意すべきポイントも多くあります。
そのため、専門知識を持つ弁護士や税理士の支援を受け、適切な計画を立てることが何より重要です。
当事務所では、遺産分割・相続分野で多数のケースを解決しております。代償分割を検討している方、または財産分割方法を迷われている方は、ぜひお気軽にご相談ください。親切丁寧にヒアリングを行い、円満な遺産分割のお手伝いを心掛けています。