遺言を作成する際や遺言を執行する際には、「遺言執行者」という言葉を耳にする機会があります。遺言執行者は、遺言の内容を実際に実行し、遺産を相続人に移転する役割を担う重要な存在です。
ただし、「遺言執行者はどのように選ばれるのか」「具体的にどのような役割を果たすのか」「責任が生じる場合とはどのような場合なのか」など、遺言執行者に関して分からないことが多いのではないでしょうか。
このページでは、遺言執行者の役割、責任、選任手続きについてわかりやすく説明いたします。
このページの目次
遺言執行者とは何か?
遺言執行者とは、亡くなった方が残した遺言書に書かれた内容を実際に実行する人を指します。遺言執行者が選任されている遺言では、相続人自身が遺言の内容を実行する必要はありません。
原則として、遺言執行者が中心となって遺言内容を実現します。
具体的には以下のような人物が遺言執行者になることが多くあります。
- 相続人や遺産受取人などの利害関係者
- 弁護士や司法書士などの法律専門職
- 銀行などの法人
遺言執行者の役割(主な任務)
遺言執行者は、法律で定められた以下の任務を果たす必要があります。
① 遺言内容の調査と相続人への通知
遺言執行者は、遺言書の内容を調査し、遺産の内容や相続についての権利義務を確認します。
また、相続人に対して遺言内容を伝え、必要な手続きを行う役割も担います。
② 財産管理業務
相続手続きが完了するまでの間、遺言執行者は亡くなった人の財産を管理し、不正な使用や侵害を防ぎます。
具体的には、不動産、不動産収入金、銀行預金、有価証券等を適正に管理し、必要な費用の支出を行います。
③ 相続財産の具体的な名義変更手続き
遺言の内容に従い、相続財産について名義変更や相続登記手続き、銀行預金の解約手続き、株券の名義変更などの実務的な手続きを責任をもって実施します。
遺言執行者がいる場合、法務局や銀行などへの各種手続きを当人が担うため、相続人の負担が軽減されます。
④ 遺言の執行完了時の報告義務
すべての遺言内容を執行し終えると、遺言執行者は速やかに各相続人に対して執行内容を報告する義務があります。
収支報告書や財産目録などの書類を作成し、相続人の皆さんに詳細内容が分かるよう報告を行います。
遺言執行者の責任はどのような場合に生じるのか?
遺言執行者は重要な役割を果たすため、それに伴う法律上の責任も明確に規定されています。責任が発生するケースには以下があります。
- 故意または重大な過失により財産の管理・運用を誤り財産に損害を与えた場合
- 職務を怠り期限内・合理的な期間内に手続きをしなかったことにより相続人に損害を与えた場合
- 自己の利益を優先して相続財産を不当に処分・流用した場合
このようなケースでは、遺言執行者が相続人や受遺者(遺言により財産を受け取る者)に対し、損害賠償の責任を負う場合があります。
遺言執行者の選任方法と手続きについて
① 遺言による指定
遺言により遺言執行者を指定することができます。この場合、亡くなった直後から任務がスタートします。最もスムーズに手続きが進むため、遺言時に指定しておくことを推奨します。
② 家庭裁判所による選任
遺言書に遺言執行者が指定されていない場合や指定された遺言執行者が業務を遂行できない場合、相続人その他の関係者が家庭裁判所に申立てを行い、遺言執行者の選任を要請できます。
特に遺産の分配や複雑な相続内容の場合、法律の専門家である弁護士が執行者に選任されるケースが多く見られます。
遺言執行者選任までの期間目安
選任方法 | 選任までの期間(目安) |
遺言による指定 | 遺言者死亡後即時~数日以内 |
家庭裁判所による選任 | 申立後約1か月~3か月程度 |
遺言執行者の報酬について
遺言執行者には、その職務に対する報酬を定めることができます。遺言書に報酬額や報酬取得方法が記載されている場合はそれに従います。
記載されていない場合、家庭裁判所で報酬を決定できます。司法書士や弁護士が執行者として就任する場合、遺産総額の1%~3%前後を目安とすることが一般的です。
まとめ
遺言の内容を正確に執行するためには、遺言執行者の役割が非常に大切となります。ただ、遺産手続きや法的処理は専門性を要し、ミスがあると責任が生じることもあります。
ぜひ相続問題に精通した弁護士など、経験豊富な法律専門家に遺言執行者を依頼することで安心して手続きを進めることが可能になります。
当事務所では多様な相続案件を解決してきた実績をもとに、遺言執行者業務についても親身にサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。