相続手続きをスムーズに進める際には、まず「財産目録」をきちんと作成することが大切です。
この財産目録とは、亡くなられた方(被相続人)が保有していた財産を詳細に一覧にまとめた書類です。正確な財産目録を作成することで、相続人同士のトラブル防止や遺産分割協議を円滑に進めることができます。
そこで、この記事では、財産目録の作成に必要な手順を明確にし、作成漏れを防ぐ具体的なコツを詳しく解説していきます。
このページの目次
そもそも「財産目録」とは何か?
財産目録は、相続の際に対象となる財産をすべて書き出した一覧表のことです。
具体的な内容としては、現預金や不動産、有価証券、貴金属といった「プラス財産」だけではなく、ローンや未払税金、借入金などの「マイナス財産」も全て詳細に記載します。
相続財産の全体像を絞り込み、客観的かつ公平な遺産分割を行うための土台となるため、正確さと網羅性が求められます。
財産目録に記載する主な項目とは?
一般的に財産目録に記載する項目は以下のとおりです。
プラス財産
- 現金・預貯金(銀行名・支店・口座番号・残高)
- 不動産(土地・建物の所在地、地目、面積、登記簿情報)
- 有価証券(株式・投資信託の銘柄・数量など)
- 動産(車、貴金属、骨董品、美術品等の種類・時価概算)
- その他財産(貸付金、未収入金など)
マイナス財産
- 住宅ローンや借入金(金融機関名、残高、返済スケジュール)
- クレジットカード未払い残高
- 未払税金(所得税、住民税、固定資産税など)
- 連帯保証債務
財産目録の作成手順(4つのステップ)
Step1 相続財産の調査と情報収集
まずは、通帳・証書など故人の保有していた財産に関する資料を収集しましょう。
不動産については登記簿謄本(登記事項証明書)を、不動産の評価額の確認のために固定資産評価証明書も取得します。有価証券は証券会社の残高報告書等を準備します。

Step2 財産の分類・整理
集めた資料を基に財産を種類別に分類します。
特に、金融資産と不動産の資産状況は丁寧に整理することが重要です。負債についても忘れずにリスト化しましょう。

Step3 財産目録の作成
分類・整理した財産を一覧表にしていきます。
表記は財産の種類や保管場所など重要事項を明確に記載し、相続人が誰でも理解できる明確な表現に努めましょう。
財産種類 | 具体的内容 | 評価額(時価) | 保管・管理状況など |
預貯金 | 〇〇銀行 〇〇支店 普通口座 口座番号1234567 | 3,500,000円 | 通帳保管場所:自宅金庫 |
不動産 | 〇県〇市△丁目〇番地 宅地(100㎡) | 20,000,000円(固定資産評価額) | 居住中 |
負債 | △△銀行住宅ローン 残高350万円(令和5年10月現在) | -3,500,000円 | 毎月5万円返済中 |

Step4 相続人間での共有・確認
作成した財産目録は相続人全員で共有し、内容に漏れや誤りがないかをチェックします。
不明点や相続人間での認識相違があれば早めに確認・整理します。
財産の漏れを防ぐためのコツ
- 郵便物のチェック
公共料金、銀行、証券会社などからの通知や明細を定期的に確認することで、見落とされた財産を発見できる場合があります。 - 金融機関を網羅的に確認
相続発生後、取引銀行や信用金庫に被相続人名義の口座の有無や残高証明を依頼しましょう。 - 保険の有無を確認
保険契約の存在を調査しましょう。生保協会の一括照会制度を利用することもおすすめです。
解約返戻金等がある場合があります。 - 遺品整理時の丁寧な調査
引き出しや金庫、貸金庫などの保管場所を入念に確認して、現金や重要書類を見落とさないよう注意しましょう。
専門家へ財産目録作成を依頼するメリットと費用の目安
財産目録の作成には法務・税務の知識が深く関わることがあります。弁護士や税理士などの専門家に相談・依頼することで以下のメリットが得られます。
- 財産評価の正確性向上
- 適正で網羅的な財産把握が可能
- 相続税申告などの相続手続きとの連動性がスムーズになる
料金の目安としては、財産規模にもよりますが、一般的には10万円~30万円程度が相場となります。具体的な財産内容により変動しますので、個別にご相談ください。
まとめ
財産目録の作成は煩雑ですが相続手続きを円滑に進めるためには必須作業です。相続人同士の不要なトラブルを防止するためにも、漏れなく正確な財産目録作成を心がけましょう。
当事務所では財産目録作成を含め、遺産相続に関する手続き全般をサポートしております。